ピアノ修復の意義

なぜ、古いピアノを修復するのでしょうか?


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前項でご説明したように、ピアノ修復とは大変な時間と労力がかかる仕事です。
では、なぜこんなに面倒な仕事をわざわざするのでしょうか?
新しいピアノに買いかえる方が簡単です。

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しかし100年前のピアノを修復する価値があると、私たちは考えています。
戦前のピアノには戦後の大量生産のピアノにはない味があります。
戦前は、1台1台のピアノが丁寧に作られた時代でした。
木やフェルト、革などの材料も、今のものよりずっと良い質のものが使われました。
また、ピアノメーカーが個性を競い合い、こだわりをもって作っていたため、個性の強いピアノが残されたのです。

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それに加えて、ピアノが100年近くの年月を生きてきたということもピアノの音に影響します。
ピアノは大部分が木で作られているため、私たちのように呼吸しています。
響板がピアノの魂、とも言われますが、音色を決めるのに重要な部品です。
100歳のピアノは100歳の響板を持っているので、20歳の響板にはない味を出します。
もっと言えば、100年の生きざまを反映した音を出します。
一般的には、温度湿度の大きな変化にさらされず、大切に保存されてきたピアノが良くなります。
そして、たくさん弾かれてきたピアノ、たくさんの音楽を奏でてきたピアノが、良い音を出します。

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このようなことは科学的に証明できるわけではありませんが、私たち修復師が経験的に感じていることです。
昔のピアノからは、何とも言えない深い音色、やさしい響きがします。
それは、年月が、また歴史が醸し出す音だと、私は思っています。

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このような素晴らしい文化遺産を、古くなりくたびれたからといって捨ててしまうのは、残念なことです。
修復をすればまだまだ現役で活躍できるピアノはたくさん残っています。
修復することによってピアノに新しいエネルギーを吹き込み、ピアノがもともと持っていた魅力を甦らせるのが、私たちの仕事です。

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出来上がったピアノを弾く時の喜びは格別です。
長年ピアノ修復の仕事に関わってきた多くの人が言うことですが、1台として同じピアノができあがることはありません。
1台1台違う、個性の強いピアノばかりです。
もともとの個性に加え、それぞれのピアノが持っている歴史があるからです。

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私たちの仕事は、毎回違う感動を得ることができる、素晴らしい仕事です。
またそのピアノたちが、個性を気に入ってくれる人と出会い、音楽の友として、また人生の友として、新しい出発をする時、私たち修復師の喜びはこの上ありません。