これまでの経験

修復の基本と哲学を学ばせていただいた森田ピアノ工房での経験
-1999年9月から2000年10月-
森田ピアノ工房のホームページhttp://www.morita-piano.com
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調律学校で調律の基本を学んだくらいしか経験のなかった私を受け入れ、多くのことを教えて下さった森田さん。
この方がいなかったら、今の私はあり得ません。

京都、山科にある森田ピアノ工房で研修させていただいた1年2ヶ月の間、私は本当に多くのことを学ばせていただきました。
ピアノ調律や修復の技術についてはもちろん多くを学びましたが、それだけではありません。
何も知らなかった私にとって、毎日見ることやること、すべてが新しくわくわくするものでした。
ピアノ修復という仕事の厳しさも喜びも、一緒に体験させていただきました。
また、仕事をする時の大切な姿勢を学びました。
様々なピアノを扱うこの仕事は、工場のようにマニュアルがありません。
常に異なる問題が起こり、その都度考え、悩みながら進んでいかなければなりません。
自分の頭で考えることの大切さを、森田さんから教わりました。
そして、実際に問題を目の前にしてどんな風に切り抜けて行くのかをそばで見せていただいたことは、とても貴重な経験となりました。

この仕事に対する基本的な姿勢、考え方、さらには音楽と人生についての森田さんの哲学を学んだことは、私にとって非常に大きな勉強でした。
それは、現在も私が仕事をする上で基本的な考え方となっています。
森田さんの哲学、それはとてもシンプルなものです。
音楽を奏でるための楽器作りということです。
いかに売って儲けるかという商売ではない、本当に音楽を愛してピアノと共に歌いたい人のためのピアノに仕上げること。
そのためには、音楽に対する自分の視点を持つ、つまり自分の音楽を自分の中に持つということです。

大切なのは、ピアノは音楽を奏でるための楽器だということを忘れないことです。
これは当たり前のように聞こえますが、実は簡単ではありません。
本当に音楽を愛し、ピアノを愛して情熱を持って仕事に臨む人だけができ、経済的その他の犠牲を払っても妥協を許さない仕事をし続けられる人は、多くないと思います。

森田ピアノ工房での研修で学んだことは、私にとって大切な基本となり、パリの工房で仕事をしていた時も、また今もずっと変わらず信じていることです。

パリの工房に行って、フランス人修復師のシルヴィーさんと仕事をするようになった時、職人としての姿勢や基本的な哲学が森田さんと似ている、と思うことがよくありました。
フランス語がよくわからなくても、森田さんを見ていたおかげでシルヴィーさんの言いたいことが理解できました。
また、基本を教わっておいたおかげで、フランスでも自分の見方でものを見て、自分の意見を言うことができました。

森田ピアノ工房で過ごした時間は、私にとって大変勉強になったばかりでなく、本当に楽しい日々でした。
私は、森田さんの温かい人間性と音楽に対する愛が、修復されたピアノに入り込み、人を幸せにする音となって出ていると思います。


実践を重ねながら経験を積んだパリのピアノバルロンでの10年半
-2000年11月から2011年6月-
ピアノバルロンのホームページhttp://www.pianos.fr/
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パリ見物に行った際、偶然訪れたピアノ修復工房、ピアノバルロン。
ここでその後10年もの間働くことになろうとは、最初は思いもしませんでした。

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それまでフランスのピアノをほとんど知らなかった私は、ピアノバルロンの仕事に興味を持ち、社長であり修復師のシルヴィーさんに研修を申し込みました。
フランス語を全く話せない私を快く迎えてくれたシルヴィーさんは、私の人生の中でかけがえのない友人となりました。

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約1年間の研修の後、正式に雇われてから10年、私はシルヴィーさんと二人三脚で仕事をしました。
森田ピアノ工房で一通りの仕事は見ていたけれど、実際に手を動かし、ピアノと1対1で向き合いながら悩み問題を解決したり、お客さん宅を回って調律師としての経験を積むことができたのは、すべてこの工房のおかげでした。
シルヴィーさんは、経験も少なくフランス語もろくに話せない私を、次々にお客さん宅へ送りました。

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彼女は、働く人の自主性を尊重するので、私に常に意見を求め、話し合いながら仕事を進めました。
そのおかげで、仕事もフランス語も上達しました。

フランス語も仕事も必死でした。

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前半の5年間は、与えられたことを自分なりにこなしていくだけで精一杯でした。
後半の5年間は、自分なりに仕事に対する考え方や目指すピアノのイメージができてきて、意見を言える語学力も勇気も付いてきたので、充実した日々でした。
本当にシルヴィーさんをはじめ、周りの方々にたくさん助けられました。

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この10年半で学んだことは、語りきれません。
しかし私の体の中にすべてが蓄積されています。
これから日本で仕事をしていく上で、きっとその経験が生きてくれることと思っています。

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シルヴィーさんの人間性もまた、私に哲学を学ばせてくれました。
とても温かい人間性の持ち主である彼女が修復するピアノからは、どこか温かさを感じます。
適当にいい加減な性格も仕事に表れ、きっちりし過ぎない、肩の力の抜けたピアノが出来上がります。
どの仕事にも言えるように、職人の人柄やセンスは仕事に出るものです。
とても自由でナチュラルな彼女の性格は、ピアノをありのままに歌わせる包容力があると、私は感じています。

フランスの地で、フランス人とともに、フランスピアノを修復した経験、それはフランスピアノを理解する上で貴重なものだったと思っています。

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また、フランスで仕事をし生活したことは、私に大切なことを教えてくれました。
これからの人生を私が元気に楽しく過ごせるために、参考となることを学びました。

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日本人がフランス人から学べることがあります。
逆にフランス人が日本人から学ぶべきこともあります。
国際交流は、視野を広げ、人生を豊かにするために、有効だと思います。

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このような貴重な経験をさせていただけたことに感謝します。
助けて下さった多くのみなさま、本当にありがとうございました。

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フランスで綴ったブログ
「パリ発ピアノ修復通信」
http://blogs.yahoo.co.jp/achakiko